「スレポックを求めて・・・・」 (蛇を求める冒険)

 

  
5月はじめ。
ブルガリアはキリスト教徒の多い国であるため、ヴェリク・デン(キリストの復活祭)は祝日なのだ。
今年は、5月の1日〜6日までと6連休だった。

連休の後半に、親友のロッセン、ミロと3人でロッセンの叔父さんの家に遊びに行くことに決めていたんだ。
叔父さんの家は、ブルガスから南西におよそ100kmほど行ったラドヴェッツというトルコ国境沿いの小さな村にある。
そこには、トゥンジャ川という大きな川が流れ、自然がいっぱいの場所らしい。
ロッセンが「ヘビもいっぱいいる!」というので、何日も前からぼくはとっても楽しみにしていた。


  
出発前の日。
いつものようにロッセンの家で遊んでいるとき、ロッセンのお父さんと珍しく、動物の話をしたんだ。
ロッセンのお父さんは、ぼくに、「スレポックの伝説」について語ってくれた。

・・・・その昔、とても巨大な蛇がいたそうだ。その大蛇は、馬にまたがっている騎士をも     
尾で払い落とし、大きな口で襲ってしまうという、恐ろしい蛇だった。この悪さを見かねた
神様は、その大蛇の目を見えなくし、大きく裂けている口を縫い合わせてしまったそうだ。
  そのため、スレポックは盲目となり、体の横には縫い合わされた跡が残っているのだ、と・・・・

ブルガリア語スレポック(Слепок)とは、アシナシトカゲのことを指す。
正確に言うと、アシナシトカゲ科の名前であり、同時に、その科の1種スローワームの名前なのだ。
ブルガリアにはアシナシトカゲの仲間は2種類いて、全長30cmほどにしかならないスローワームと
全長1mを超すヨーロッパアシナシトカゲがいる。
この伝説に登場するのは蛇であるが、アシナシトカゲは普通の人が見たら、まずヘビだと思うだろう。
足は無く、細長い胴体で、ニョロニョロと動く動物だからだ。
でも、とにかく、アシナシトカゲはヘビではなくアシナシトカゲである。
細かい分類の話はさておき、お父さんの話してくれた伝説に登場するスレポックは、後者の種類
ヨーロッパアシナシトカゲの方なのだ。これは、“大蛇”という大きさからしてもそうなのだが、何より
“縫い合わせた跡”というのが、ヨーロッパアシナシトカゲだけの特徴に当てはまるからだ。


ロッセンのお父さんがこんな話をしてくれたのは、今回ぼくの見つけたい目標の動物がアシナシトカゲだったからだ。
そして、ロッセンが言っているように、いろんなヘビももちろん目的。たくさん種類が見られるといいな〜

 

 

5月3日。いざ、ラドヴェッツへ!

  
Slepok_KolataNaRosen.jpg (10455 バイト) ロッセンの車(本当はロッセンのお父さんの車)で出発!
モスクビッチっていうロシア製の車。
写真からはわからないと思うけれど、実はすっごい歳なのだ。
今回のメンバー(3人+車)の中では最年長。

友達と車での移動はとっても良い。
なにが良いかというと、好きなときに好きなところで止まってくれるからだ。
例えば、ミロが「ハーブを摘みたい!」って言えば、車を止めて、
お目当てのハーブが生えているかどうかを調べる。(←写真)

  
ラドヴェッツまでの道、3時間ほど(途中ロッセンが道を間違えたから30分程余計に走った)で、5匹ヘビを発見した。
ヘビ発見とは言っても、道路でひかれているヘビを運転しているロッセンが逐一教えてくれただけだけどね。
5匹のうち3匹は、ぐちゃぐちゃにひかれていたり、ぺったんこになって道路と一体化して
いたりだったので、詳しくは調べなかった。種類不明。

だけど、そのうちの2匹は、なかなか綺麗な死に様だった。
車を止めてもらって、調べてみる。
どちらも同じ種類のようだ。
Голям стрелец (ゴリャム・ストレレッツ)っていうヘビだった。
2匹のうちより綺麗でより新鮮な方を、生きているかように置いて撮影会。(写真→)
このヘビは、ブルガリアの原っぱや道路でもっとも頻繁に見かける種類。

友達の運転する車だと、こういう融通が利くからとっても良いのだ。

Slepok_GoljamStrelets.jpg (27223 バイト)
  

 

ラドヴェッツ、そして叔父さんの家。

  
Slepok_Radovets.jpg (11814 バイト) セロ(村) ラドヴェッツ。
「典型的なブルガリアのセロ」の例に漏れず、赤い瓦にレンガ造りの
家が建ち並ぶ。(←写真)

叔父さんの家には、ロッセンの叔父さん夫婦とお祖父さん、そして

叔父さんの娘夫婦とその子供らがいた。
ぼくらが到着すると、すぐに庭のテーブルでもてなしてくれ、コーヒーはもちろん、ラキアなどお酒に肉料理やお菓子などなど、いろいろ出してくれた。(写真→)

Slepok_MasataNaBun.jpg (17014 バイト)

よい天気でポカポカの中、こうやって庭のテーブルで軽くお酒を飲みながらお喋りするのは、とても気持ちが良い。久しぶりの再会で積もる話をしているロッセン達のお喋り以外には、鳥とロバと犬の声くらいしか聞こえない。この静か〜に、のんび〜り流れる時間の中に身を置いているだけで、自然に『あぁ、いまセロにいるんだなぁ』と実感してしまう。
やっぱりセロは大好きだな

 

初日。

  
この日は、移動日ということもあって、村外れの原っぱ〜林を1時間ほど歩いただけ。
右の写真にあるクリムスキ・グシテル(Кримски гущер)をはじめ、クソクラク・グシテル(Ксокрак гущер)、ミドリカナヘビなど、数種類のトカゲを見られた。まぁ、これらのトカゲはブルガス周辺でもよく見るトカゲなので、ぼくにとっては特に目新しい動物ではない。

カエルも2種類、ワライガエルとヨーロッパアマガエルがいた。これも、残念ながら、ぼくは何度も出会っている種類。
「まぁ、初日だし、こんなもんだろう」と早々に切り上げ、叔父さんちで食事の準備。
  

Slepok_KrimskiGushter.jpg (23165 バイト)

ブルガリアでは、ヴェリクデン(復活祭)には子羊を食べる習慣がある。
とくにセロでは、庭先で子羊を絞め、解体し、食べるのだ。
ぼくらが着いたとき、叔父さんの家にはすでに絞められた子羊が2匹、小屋の天井から吊されていた。
(絞めるシーンを、ぼくはあまり見たくないので良かった)
Slepok_Agne.jpg (16409 バイト) 抜かれた内蔵部分に、臓物とご飯を炒め合わせた物を詰め(←写真)、
お腹を縫い合わせ、かまどで丸ごと焼く。
かまどで焼くのは明日らしく、今日は準備だけ。

このあと、叔父さん達みんなと宴会が始まり、ヘビの話でとても盛り上
がった。田舎の人たちとの動物の話は面白い。「俺はこんなヘビを見た
ことがあるぞ」「俺はこんな場所で見た」と、みんなそれぞれの体験を
話してくれるので、聞いていてまったく飽きない。しかし、ずいぶん長い
間話をして、ずいぶんラキアを飲んだため、夜の調査にはとても行け
なかった。

・・・・そして、深い眠りにつきました。

 

2日目。快挙!

お酒のせいでか、ぼくとミロは昼近くまでぐっすりと眠ってしまった。
顔を洗い、遅い朝食をいただき、そして早速フィールドへゴー!
  
Slepok_Skali.jpg (17720 バイト) 今日は、ヘビが多いという、山の上の岩場地帯を探索。
てっきりぼくら3人で行くのかと思いきや、叔父さんとお婿さんもいっしょに参加。
男5人でのヘビ探しになった。

その岩場近くまでは車で向かい、みんなで岩場を捜索。
探しはじめて間もなく、ミロが茶色いヘビを目撃!
ぼくとロッセンでその逃げ込んだ茂みを探していると・・・・

お婿さんが、「こっちに2匹いる。今見えているから、早く来い!」とのこと。

そっちに行ってみて、ビックリだった!

なんと、今回の1番の目的のヨーロッパアシナシトカゲだ! しかも、交尾しているところ!
すごい、何てラッキーな!!

岩陰でいまいち見えにくいが、貴重な場面なので、慌てて何枚も写真を撮った。
しかし、ぼくらの気配に気が付いたらしく、ほどなくして2匹揃って岩の穴にスルスルと潜っていってしまった。

初っ端からすごいシーンを見られて、もう大満足のぼく。
しばらく満足感に浸っていると、ロッセンが「あの茂みを徹底的に探そう!」って。

トゲトゲの植物の茂みで、なかなか思うように手を出せない。
棒を使ってあちこちから突っついたり、根本の大きな岩を動かしたりしていると、
ロッセンが「ここに尻尾が見えている!」と。
ぼくは、急いで尻尾を取り押さえ、ズルズルと引きずり出した。

大きさは1mあった。捕まえた瞬間は、体をひねってもがいていたが、いったん捕まえてしまってからはとても大人しい。攻撃的な動物ではないようだ。

捕まえてみると、ヘビではないということが、よくわかる。
まず、体の硬さ。ヘビのように柔軟な体ではなく、頑丈な鎧をまとっているかのように、ガチガチの体。ぼくの腕にしっかり巻きつくことが出来ないほど、体が固い。
そして、顔つきや太い首などもトカゲそのもの。ヘビには見えない。
  

Slepok_SlepokVLaka.jpg (24227 バイト)

→ もっとみる

  

『スレポックはヘビだ』と主張していた叔父さん、お婿さんも、捕まえたスレポック(ヨーロッパアシナシトカゲ)
を見て、「あぁ、これは確かにヘビじゃねぇ。トカゲだ」と納得していた。

伝説にある「縫い合わされた跡」というのは、写真からもわかると思うが、体側に1本の溝のような筋が走って
いるためだ。そして、「スレポックは盲目」という話は、、、、なぜそうなのか、ぼくにはわからない。スレポック
のもう1種類スローワームはまだ見たことがないが、少なくとも、このヨーロッパアシナシトカゲに関しては
目は見えているようだし、視力が悪いとも思えなかった。

ま、とにかく、この大迫力の爬虫類を捕まえて大喜びのぼくは、何枚もの写真を撮り、そして、岩場地帯に
逃がしてあげました。ばいばい。

(つづく)

註釈:文章中の動物名に、和名とブルガリア名の2表記が混在しています。
できるかぎり和名表記を心掛けましたが、和名が不明のトカゲなどはブルガリア名(カタカナ読み+現地語表記)にしています。

 

    
.........ペペリャンカ(第2部).........
    

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[2002.5.31 作成]

 

 

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